面接会場へGO
春キャス募集に応募した黄田は浮かれていた
もうすぐ夢の国で船長デビューだ!毎日ジャングル探検して、子供のころ出会った船長のように、誰かの記憶に残るような仕事をしたいと思っていた。まだ面接も受けていないのに、目標は中途半端に大きい。
調べると、採用されると準社員という立場になるらしい。端的に表現するとバイトである。
そして学生中心の土日キャストと、専業キャストが選べる。
専業キャストはさらに平日のみ働くか、土日も混ぜて働くか選べる。
黄田は週末サッカーや野球をしていたので、出来きることなら平日のみ働きたかった。
採用されなければ条件を妥協すればいいと考えていた。
そして面接当日。
こんなに人おるん?
指定された面接時間に合わせて舞浜駅の改札を抜けると、ぽい人達がちらほら。昼前の時間なのでこれから遊びに行く目的ではなさそうだけど、なんか浮ついた雰囲気が出てる。駅前のバス乗り場を通り抜けて新浦安方面へ歩く。ぞろぞろまではいかないけど、学校で行われる強歩大会の中盤戦くらいの人の群れ。
人の群れの終点である面接会場は、浦安市立のなんか大きい体育館。オリエンタルマネーで建てたのか立派な体育館である。
受付で希望を書くためのアンケート用紙を貰い体育館に入ると、バスケットコートが一面面接ブースで埋め尽くされていた。こんなに人おるん?朝から晩までこのペースで面接とか何人くるんだ?

アンケート書くのに用意されたパイプ椅子に座って周りを見れば、満員のファミレスくらいの人数がいる。そりゃ面接ブースもたくさん必要だ。そして女子も男子もスーツ率高い。
(おかしい、ここはバイトの面接会場のはずだ!)
周りの意識の高さに軽くひいていた・・・応募した経緯は重たいけど、応募した気持ちは軽くて浮ついている自分に突き刺さるこの場違い感。
これからフットサルでも始めるんですか?と言われそうな格好しているのはこの会場でただ一人、自分だ。
後ろにいるこの会場で仲良くなったであろう就活スーツ女子二人組は
「どこから来たんですか?」「え、宮城?私もですー」なんてキャッキャしている。地方から挑む人もいるんだな。
周囲からキャストになりたいオーラをひしひし感じる。もしかしてこの会場で志が一番低いのオレですか?そうですね、あなたが一番低いです。宮城ガールズのオーラに当てられ気分も落ち込む。
一人脳内面接会では「黄田様のこれからのご健康とご活躍をお祈りしています」とお祈りメールまで受信していた。
言うだけ言って帰ろう
アンケートには、少々の個人情報と最寄り駅、希望職種、勤務可能日(土日か平日か、どっちも可能か?)と簡単なものだった。
早々にジャングルクルーズで単願、平日のみとアンケートを書き終え係の女性に渡す。
5分くらいで名前を呼ばれ、8番ブースへ誘導される。そのまま出口へ誘導されなくて良かった。
異変も感じないのでそのまま面接ブースへ進む。
面接官は40代後半くらいの男性だった。髪の毛はボリュームがあって顔立ちは深い造形だ。今の自分と違って栄養状態が良さそうだ。さっすがオリエンタルさんだ、ええもん食べてまんな。
面接官はなんというか仲代達也に似てた。ダンディな顔にダンディな声。勝手にダンディ達也と呼ぼう。達也ー!
おっといかん、面接に集中しよう。
「最寄り駅は○○金駅でいいかな?」
「そうです」・・人とおり個人情報の確認が終わって最初の質問がそれかい?
最寄り駅を聞いたダンディ達也は教科書くらいのファイルをペラペラとめくる。
「えっと始発は5:20だね、乗れそう?あと23:10発の電車に乗れば帰れそうだけど、深夜に帰るのは大丈夫そう?」
ファイルの中身は関東近郊駅の始発と舞浜への到着時間、帰宅できる採集電車が確認できるもののようだ。
「始発も終電も大丈夫です。」特に考えずさらっと答える。始発から終電まで働くようなブラック環境に耐えてきた自分にはなんてことない。
「希望はアトラクションで、ジャングルクルーズでいいのかな?それだけでいいの?第3希望くらいまで書いてくれると採用されやすいと思うけど?」
「第一希望だけで大丈夫です。」
「志望の理由が何かあるんですか?」ダンディ達也、ここで初めて質問の深堀り。
「これまでディズニーにはあまり遊びにくる機会はありませんでしたが、子供のころ母親と二人で遊びに来た時の記憶があります。その時の記憶で一番よく残っているのがジャングルクルーズでした。それ以外は覚えてないです。その時の船長がかっこよかったです。今になって自分もそういう記憶に残るような船長になりたいと思いました。なのでダメなら他の職種でとかは考えてないです。」
言ってやったぜ!嘘も言ってない。
「わかりました。ちなみに平日の週五日希望で間違いない?」ダンディ達也、深堀りした質問でもサラっと次の質問。
「平日だけでお願いします。土日はクラブ活動をしています」クラブ活動といっても草野球と草サッカーだけどね。
「そうですか、わかりました。アトラクションは人気なので希望が通らない事のほうが多いです。本当に大丈夫ですか?パーキングキャストなんかは報酬も多いですがどうですか?」
「第一希望だけで大丈夫です」そんな言い方したらパーキングは不人気って言ってるようなもんじゃん。
「はい、では強く希望されてると記しておきますね。それと少し髪が長いようですが規定のヘアスタイルにすることは問題ないですか?」
噂のディズニールックってやつね。(2025年現在は髪色とかだいぶ緩やかになっている規定)
「坊主にしろとかじゃなければ大丈夫です」軽くボケてみる。
「坊主は逆にダメです!」ダンディ達也、ボケは拾ってくれない。
正味10分くらいの面接時間だったが希望は伝えたし、笑顔もキープできていたはず。
ダンディ達也とはあまり嚙み合わなかったような気がするけど、無職で卑屈になっていた人間が一歩進んだと思えば結果がダメでも納得できるような気がする。そもそも受かる気を見せていたか疑問な応募者だったと思うし、受かればラッキー。ダメだったらもう少しハロワに通うだけだ。
採用の場合は2週間くらいで、直接電話連絡があるそう。応募者も多そうだし、全員に連絡は非効率だ。
ダンディ達也に面接のお礼を伝えてブースを出た。
出口に向かう途中のブースでは、宮城ガールズの面接が続いているのが見えた。
面接ブースの中でもキャッキャしている。盛り上がっている宮城ガールズの様子を見て、たぶんオレ落ちたなと思った。
次回、結果編

